脳深部刺激療法(DBS)体験記 調整篇 その1

(手術編 その7からの続き) 前回の投稿から大分時間が経ってしまいました。実は私にとってDBSの調整はある意味手術よりも大変だったので、なかなかこの投稿を書こうという踏ん切りがつかなかったのですが、そうばかりも言ってられません。これからもよろしくお願いします。

破壊効果

さて、話は去年(2021年)の11月に戻ります。手術そのものが終わってからも破壊効果は続いていたので、電気刺激そのものの開始は手術から1ヶ月後に再入院して行われることになりました。手術の直後は破壊効果のおかげで体がパーキンソン病にかかる前のように思い通りに動いたので、本当に嬉しかったのを覚えています。その破壊効果は1か月のあいだに徐々に失われていったのですが、それについては随分と残念に思ったものです。

対象喪失

パーキンソン病によって「体の自由」が失われるというのは非常に独特な感覚です。私が最初に自分の体の異変に気付いたのは、コンピューターのキーボードが打つのがそれまでになかったぐらいに遅くなったからでした。そのころ私はカリフォルニアの大学院で臨床心理学を勉強していたのですが、ある時期か課題のレポートを書くのに非常に苦労するようになりました。以前は頭でいろいろなアイディアをまとめながら流れるようにタイプすることができて、また私自身その能力にもずいぶんと自信を持っていました。それが、キーを1回押すのにも苦労するようになってしまいました。

機能不快

心理学者のカール・ビューラーは、自分の持っている能力を使うときに得られる快感を「機能快」と呼びました。これに倣って、私は自分の体に起きた変化のことを「機能不快」と呼ぶようになりました。これは「自分があると思い込んでいる機能がなかったと気づいたときに経験する不快感」のことを指しています。実際にはチェーンの切れた自転車のペダルを必死に回したりするような感じです。オイルの切れた機械を無理やり動かそうとしているようだ、といいかえてもいいでしょう。いずれにせよ、非常に不毛かつ不快なものです。つくづく健康な人間の体はよくできていると思わされます。(続く)

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