この投稿では主にDBS手術の様子を、スタッフ間の役割分担を中心に報告しています。
高まる期待
(その3からの続き) 検査入院が終わってから病院側のスケジュール調整が終わるまで自宅待機が続きました。ようやく2021年11月に手術が行われることが決まりました。以前の投稿でも書きましたが、脳に電極が埋め込まれるのが楽しみでした。そのおかげで手術そのものに対する不安はほとんど感じませんでした。むしろ調子に乗って「僕もようやくサイボーグになれます!」などと言っていたぐらいです。そんな私を見て、かえって周りの方が心配していました。
看護師のK君は手術の前日の私を様子を見て、「普段とまったくかわらないのでびっくりした!」と言ってました。今から考えると手術の不安に対する防衛規制だったような気がします。しかし、不安になりすぎて体調に悪影響が出るよりはマシだったかな、という感じもします。人間の心と体は本当に良くてできていると思わされます。
局所麻酔
私の脳深部刺激の手術はかなり大きなものでした。実際に、施術自体に8時間かかりました。最初の5時間は脳に電極を埋め込む作業に費やされるとのことでした。また。その作業は局所麻酔のみで行われる、ということでした。要するに、私の意識は覚醒したままになるということです。これを聞いたときには楽観的な私も流石にゾッとしました。グルメな人たちが猿の脳みそを生きたまま食べる、という昔の映画のシーンを思い出しました。
通常業務
手術は朝の8時半にはじまり、予定通り8時間で終了しました。麻酔をかけられて意識が朦朧としながらストレッチャーで手術室に運ばれました。そのときに、スタッフのどなたかの「今回は各部署からレジェンド級の方々が集まりましたね!」というやたらと明るい声が聞こえてきました。これには大変失礼ながら「こんなノリで本当に大丈夫なのかしらん」などと訝しく思ったものです。が、今考えるとやたらと緊張しているよりは普段通りにリラックスしていたほうが良かったのかもしれません。私にとっては一生に1度の一大事ですが、スタッフの方にとっては仕事の一部で、そこまで特別なことではなかったということなのでしょう。
効率的な役割分担
電極は正確に対象となる脳の部位に挿入する必要があります。そこで、まずMRIの画像データから私の脳の3次元のモデルが作成されました。さらにそのモデルに基づいて電極の位置が決定されました。これらの作業は手術の最初の1時間ほどで行われました。
この時に感心したのは、スタッフの間での役割分担が非常に効率的に行われていたことです。実際に手術を行う脳外科医のN先生と、手術中に電気刺激が実際に機能しているかどうかを確認する私の主治医の神経内科のT先生、また手術全体の方針を決定する神経内科のS教授。この3人がテキパキと効率良く作業を進めているのが、よく分かりました。特に手術中に得られる膨大な情報を見ながら瞬時に細かい判断を下していたS教授の能力には感嘆しました。彼の自信に満ちた声を聞きながら、私は高度に発達した医療技術に驚嘆しました。(その5に続く)