第4章 診断と検査 

クローン病の診断は、特徴的な臨床症状、画像検査、内視鏡検査、血液検査などを組み合わせて総合的に行われます。早期発見と正確な診断は、適切な治療開始と合併症の予防に繋がるため、非常に重要です。

4.1 臨床症状からの診断

クローン病の診断は、まず患者さんの訴える症状から始まります。腹痛、下痢、血便、体重減少、発熱などの消化器症状に加え、関節炎、皮膚症状、眼症状などの消化器外症状も重要な手がかりとなります。医師は、これらの症状の詳細な問診を行い、クローン病の可能性を評価します。

ただし、クローン病の症状は他の消化器疾患と類似している場合があり、臨床症状のみで確定診断することは困難です。そのため、様々な検査を組み合わせて診断を確定していきます。

4.2 画像検査

画像検査は、クローン病の診断において重要な役割を果たします。腸管の炎症や病変の広がり、合併症の有無などを評価することができます。

  • X線検査: 腸管の狭窄、瘻孔、腸閉塞などを確認するために、バリウムを用いたX線検査が行われることがあります。
  • CT検査: 腸管の炎症や病変の広がり、腸管外の合併症(膿瘍、瘻孔など)を詳細に評価することができます。
  • MRI検査: CT検査と同様に、腸管の炎症や病変、合併症を評価することができます。特に、小腸病変や肛門周囲病変の評価に優れています。
  • 超音波検査: 腸管の炎症や肥厚、腸管外の合併症を評価することができます。簡便で侵襲性が低いため、繰り返し検査を行う場合に有用です。

4.3 内視鏡検査と生検

内視鏡検査は、クローン病の診断において最も重要な検査の一つです。内視鏡を用いて、消化管の内部を直接観察し、炎症や潰瘍、狭窄などの病変を確認することができます。また、生検(組織の一部を採取する検査)を行うことで、顕微鏡での組織学的評価が可能となり、クローン病の確定診断に繋がります。

  • 上部消化管内視鏡検査: 食道、胃、十二指腸を観察し、上部消化管病変の有無を評価します。
  • 下部消化管内視鏡検査(大腸内視鏡検査): 結腸、直腸を観察し、下部消化管病変の有無を評価します。
  • 小腸内視鏡検査: 小腸を観察し、小腸病変の有無を評価します。カプセル内視鏡やバルーン内視鏡などの特殊な内視鏡が用いられます。

4.4 血液検査

血液検査は、クローン病の診断をサポートするだけでなく、病気の活動性や重症度、合併症の有無などを評価するためにも重要です。

  • 炎症反応: CRP(C反応性蛋白)、赤沈(赤血球沈降速度)などの炎症マーカーが上昇します。
  • 貧血: 鉄欠乏性貧血やビタミンB12欠乏性貧血などが起こることがあります。
  • 栄養状態: アルブミン、プレアルブミンなどの栄養状態を示す指標が低下することがあります。
  • 肝機能: 肝酵素(AST、ALT)などが上昇することがあります。
  • 腎機能: クレアチニン、尿素窒素などが上昇することがあります。

4.5 鑑別診断

クローン病は、他の消化器疾患と類似した症状を示すことが多いため、鑑別診断が重要となります。特に、潰瘍性大腸炎、感染性腸炎、腸結核、ベーチェット病、腸管悪性リンパ腫などとの鑑別が必要です。

医師は、臨床症状、画像検査、内視鏡検査、血液検査などを総合的に評価し、他の疾患の可能性を排除した上で、クローン病の診断を確定します。

本章のまとめ

第4章では、クローン病の診断と検査について解説しました。臨床症状からの診断、画像検査、内視鏡検査と生検、血液検査、鑑別診断など、様々な検査方法とその役割を説明しました。早期発見と正確な診断は、適切な治療開始と合併症の予防に繋がるため、非常に重要です。

この章で学んだ重要ポイント

  • クローン病の診断は、様々な検査を組み合わせて総合的に行われる
  • 画像検査は、腸管の炎症や病変、合併症の有無などを評価する
  • 内視鏡検査と生検は、クローン病の確定診断に繋がる
  • 血液検査は、病気の活動性や重症度、合併症の有無などを評価する
  • 鑑別診断が重要であり、他の疾患の可能性を排除した上で診断を確定する

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