脳深部刺激療法(DBS)体験記 手術篇 その3

この投稿では、DBS手術の前の検査入院について報告しています。

検査入院のときに病室から撮った名古屋の夜景

三途の川

(その2からの続き) 医学的に客観的なことは今となってはわかりません。が、あのアメリカから帰国してから2、3ヵ月の間の体験は、個人的にはまさしく死線をさまよっていた、としか表現のしようがないものでした。この状態が永遠に続くと思われました。が、現在の主治医のT先生の診察を受けてから1ヵ月ほどで、ようやく症状のコントロールが出来るようになりました。

薬漬けの日々

しかし、多少マシになったとはいえ、当時は100mgのL-DOPAの錠剤を毎日10錠飲んでいました。1日の摂取量の上限が1500mgだったことを考えると、すでにそのときには薬物療法だけの治療ではそう遠くない未来に手詰まりになるのは明らかでした。この頃は、毎日起きている間は正確に1時間45分毎にL-DOPAの錠剤を飲んでいました。これが5分でも遅れようものならえらいことになりました。そのあと数時間は強烈な不快感や痛みに襲われる、という有様でした。

地獄に仏

このような経緯があったので、2021年の初頭に現在の主治医のT先生に初めてお会いしたときから、脳深部刺激療法(DBS)の手術を受けたいという希望を伝えていたと記憶しています。この手術のことについてほかの方に話すと、ほとんどの場合脳に電極を挿すことに対して非常に強い抵抗を示されます。が、私はこの苦痛から逃れられるなら何でもする覚悟がありました。頭蓋骨に穴を開けられるぐらい全く大したことではない、という気持ちでした。むしろ、私は以前から脳波の測定に興味があったので、これで脳に電極が刺さったら、ノイズの少ない正確な脳波が測定できる、と喜んだぐらいです。

脳深部刺激の手術には8時間ほどかかる、と言われました。そこで、手術の準備のために薬が効いているあいだに極力運動をして体力をつけるように努めました。元々運動が好きだったことが幸いしたようです。2021年の半ばにT先生から病院側の手術の準備はできたと知らせを受けました。本当に安堵しました。

「え、頭が悪いと手術がうけられないの?!」

しかし、詳しい説明を聞くと、誰でも手術を受けられるというわけではないようです。主な問題は二つありました。

  • 電極は脳の視床下核のSTNに正確に挿入されなければならない。しかし、その際に電極が前頭葉を通過するので、知能が低下する可能性がある。このような事態のために、手術前に測定される知能指数には下限が設定されている。したがって、閾値より低い場合には手術は受けられない。
  • 年齢が高すぎると、既に進行した老化により手術の効果が期待できない。したがって、この場合も手術は受けられすない。

検査入院

脳深部刺激療法への適性を確かめるために、2週間ほど検査入院をすることになりました。MRIなどいままでしてきた検査がかなり念入りに繰り返されました。しかし、私にとってのメインイベントは知能テストでした。WAIS-IVとそれを補うための記憶力のテストがあり、全体で二日かかりました。正直これまでに受けたどのような試験や面接よりも緊張しました。私の人生がかかっていました。

結局結果には全く問題はありませんでした。というか、むしろ全体的なスコアはかなり高くでました。なぜか処理速度だけスコアが非常に低かったのが気になりました。これもパーキンソン病の影響なのでしょう。なかなか悩ましいところです。(その4に続く)

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