第2章 診断と治療

潰瘍性大腸炎の診断と治療は、近年目覚ましい進歩を遂げています。ここでは、最新の知見に基づき、診断から治療法の選択肢、そして今後の展望までを詳しく解説していきます。

診断:病気のサインを見逃さない

潰瘍性大腸炎の診断は、いくつかの段階を経て行われます。まず、医師はあなたの症状や病歴について詳しく聞き取りを行います。特に、血便、下痢、腹痛などの典型的な症状に加え、発熱、体重減少、貧血などの全身症状についても注意深く確認します。

次に、血液検査や便検査が行われます。血液検査では、炎症反応の程度や貧血の有無などを調べます。便検査では、潜血反応や炎症性マーカーなどを確認し、感染症との鑑別も行います。

これらの検査結果に加え、画像検査や内視鏡検査が行われます。画像検査では、X線やCT、MRIなどを用いて大腸の全体像を把握し、炎症の広がりや合併症の有無などを評価します。内視鏡検査では、内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜を直接観察します。この検査では、炎症の程度や潰瘍の深さなどを詳細に評価できるだけでなく、組織の一部を採取して顕微鏡で調べる病理検査も行うことができます。病理検査は、潰瘍性大腸炎の確定診断に不可欠であり、他の炎症性腸疾患との鑑別にも役立ちます。

治療:多様な選択肢から最適なものを

潰瘍性大腸炎の治療は、病気の活動性や重症度、患者の状態に合わせて、個別に計画されます。治療の主な目的は、炎症を抑え、症状を改善し、合併症を予防することです。

薬物療法は、潰瘍性大腸炎の治療の中心となります。主に以下の薬剤が使用されます。

  1. 5-アミノサリチル酸製剤(5-ASA:大腸の粘膜に直接作用し、炎症を抑える薬です。軽症から中等症の潰瘍性大腸炎に対して、第一選択薬として使用されます。内服薬、坐薬、注腸薬など、様々な剤形があります。
  2. ステロイド薬:強力な抗炎症作用を持つ薬です。中等症から重症の潰瘍性大腸炎に対して、短期間の使用が考慮されます。しかし、長期使用による副作用があるため、注意が必要です。
  3. 免疫調節薬:免疫システムの働きを抑え、炎症を抑制する薬です。ステロイド薬の効果が不十分な場合や、ステロイド薬の減量・中止を目的として使用されます。
  4. 生物学的製剤:特定の免疫物質の働きを阻害し、炎症を抑制する薬です。重症の潰瘍性大腸炎や、他の薬剤で効果が得られない場合に使用されます。

薬物療法に加えて、食事療法や外科的治療が行われる場合もあります。食事療法は、症状の悪化を防ぎ、栄養状態を改善するために重要です。消化の良い食品を選び、刺激物や食物繊維の多い食品を避けることが推奨されます。外科的治療は、薬物療法で効果が得られない重症例や、合併症が生じた場合に考慮されます。手術の方法としては、大腸全体を切除する手術や、肛門を残して大腸の一部を切除する手術などがあります。

今後の展望:さらなる進歩に向けて

潰瘍性大腸炎の治療は、日々進歩しています。新しい薬剤の開発や、腸内細菌叢をターゲットとした治療法、再生医療の研究などが活発に行われています。これらの進歩により、将来的には、より効果的で副作用の少ない治療法が確立されることが期待されます。

また、近年では、患者自身の経験や声を治療に活かす取り組みも広がっています。患者参加型の臨床試験や、患者主導の研究プロジェクトなどが行われ、治療の質向上に貢献しています。

まとめ

潰瘍性大腸炎の診断と治療は、複雑で多岐にわたります。しかし、最新の医療技術と、医師との信頼関係があれば、病気とうまく付き合いながら、充実した生活を送ることは可能です。あなたの症状や希望に合った治療法を見つけるために、積極的に医師とコミュニケーションを取り、治療に参加しましょう。

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